機械式駐車場の事故はどうしたら防ぐことができる?
機械式駐車場の事故を防ぐためには、装置の安全対策(製造者・設置者)、適切な維持管理(管理者)、そして利用者の正しい操作という三者が協力し、多重の安全対策を講じることが重要です。
国土交通省が策定した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」に基づき、事故を防ぐための具体的な対策をまとめました。
1. 装置・設備の安全性向上(製造者・設置者の対策)
事故を防ぐための大前提として、装置自体が安全な構造・機能を備えている必要があります。
侵入検知センサーの設置
駐車スペース内に人や障害物が立ち入った場合、装置の作動を停止させる機能(ただし、センサーに頼らず目視確認が必須)。
非常停止ボタンの設置
緊急時に直ちに装置の動作を停止できるよう、操作盤の視認しやすい場所に設置する。
転落防止対策
乗降室内やパレットの周りに、人が転落するのを防ぐための適切な柵や落下防護施設を設ける。
出入口扉のインターロック
呼び出した搬器(パレット)が定位置に着床していなければ、出入口扉が開かないようにする機能。
入出庫操作の限定
他人の鍵や認証番号で操作できないようにする機能など、操作を行う者を限定できる機能を持たせる。
視認性・照明の確保
乗降室内の様子を操作位置からも確認できるモニターや、十分な照明を設置する。
2. 適切な管理と周知徹底(管理者の対策)
管理者(マンション管理組合、ビル管理者など)は、装置を安全な状態に保ち、利用者への注意喚起を徹底する必要があります。
定期点検とメンテナンス
機種や使用頻度に応じて、1〜3ヶ月に一度を目安に専門技術者による点検を受け、必要な部品交換や修理を行う。(事故の多くは経年劣化や整備不良も原因となります。)
利用者への周知徹底
正しい操作方法、注意事項、危険性を記載した書面での説明を徹底する。特に「無人確認」の重要性を強調する。
注意喚起の掲示
「無人確認を徹底する」「子供を近づけない」などの注意事項を、常に利用者が見やすい位置に表示する。
管理責任者の明示
事故やトラブルに備え、管理責任者を選任し、装置の視認しやすい場所に連絡先を明記する。
専任の取扱者の配置
不特定多数の人が利用する公共性の高い駐車場では、専任の取扱者(係員)が操作を行うようにする。
3. 利用者の正しい操作と心構え(利用者の対策)
機械式駐車場の事故の多くは、利用者の「装置内に人がいる状態での操作」など、ヒューマンエラーが原因で発生しています。利用者が最も注意すべき点です。
「無人確認」の徹底
センサー等に頼らず、必ず自分の目で装置内やパレット上に人が残っていないことを確認してから操作する。
同乗者、特に子供への注意
運転者以外(特に幼児や子供)は乗降室の外で乗降する。やむを得ず同乗者が入庫した場合は、必ず退出したことを確認してから操作する。
荷物の積み下ろしは外で
荷物の積み下ろしや車内の作業は、乗降室の外で行い、装置内に長時間留まらない。
不適切な使用の禁止
他人の鍵を使用しない、ボタン押しを固定する補助器具(棒など)を決して使用しない。
子供の立ち入り禁止
保護責任者は、子供が装置に悪戯に近づいたり、装置の隙間に転落したりしないよう、細心の注意を払う。
緊急時の対処
動作中に危険や異常を感じたら、ためらわずに非常停止ボタンをすぐに押す。
これらの対策を総合的に実施し、製造者・設置者、管理者、利用者のそれぞれが責任を持って安全確保に取り組むことが、機械式駐車場の事故防止に繋がります。