都市部の分譲マンションで機械式駐車場の空きが増える理由と管理組合が進めたい対策
マンションの機械式駐車場に空きがある一方で、住民の車が近隣の月極駐車場に停まっている。
都市部の分譲マンションでは、そんな状況が起こり得ます。
単に車を持つ人が減っただけなら説明しきれない空きもあり、台数だけを見て対策を決めると、必要な区画まで減らしたり、値下げをしても収入が増えなかったりするおそれがあります。
空き駐車場の対策を検討する際は、誰が、どの条件なら利用するのかを調べることが大切です。
本記事では、都市部の分譲マンションにおける機械式駐車場の空き問題について、区画ごとの需要の把握、料金と募集方法の見直し、外部貸しの条件整理、台数を見直す際の確認事項まで、管理組合が検討を進める順序に沿って解説します。

都市部の機械式駐車場のイメージ(AI生成)
第1章 都市部では駐車場が必要でもマンションの空きが埋まらない
駅に近い立地の便利さが車の保有判断にも影響する
都市部のマンションは、鉄道やバス、徒歩、自転車などで用事を済ませやすい立地に建っていることがあります。
通勤に車を使わず、買い物も近所や宅配で対応できる世帯なら、自家用車を持つ必要性は地方の車中心の暮らしと異なります。
一方で、子育てや介護、仕事などで車が欠かせない世帯もあります。
同じ建物の中でも駐車場の必要性はそろっていません。
「都市部だから車は不要」「ファミリー向けだから将来は埋まる」といった一括りの見方では、自分たちのマンションの需要を読み違えるおそれがあります。
東京都は、既存の分譲マンションの一部で、居住者の高齢化や自動車保有に対する意識の変化などに伴い、駐車場の利用率が低下していることを説明しています。
ただし、これはすべての都市部マンションが同じ状況だという意味ではありません。
自分たちの契約実績を確認する必要があります。(出典:東京都)
近隣の駐車需要と敷地内の需要は一致しない
周辺に商業施設やオフィスがあり、時間貸し駐車場が混んでいたとしても、その利用者がマンションの月極区画を借りるとは限りません。
買い物客は数十分だけ停めたいのに対し、月極契約では毎月の料金を負担して継続的に使うことになります。
近隣住民や勤務者に需要があっても、車両の寸法、利用可能な時間、敷地への入り方、駅や自宅からの距離が条件に合わなければ契約には結び付きません。
街全体の駐車場不足と、特定の機械式駐車場の空きが同時に起こることもあります。
第2章 空き台数を集計する前に区画ごとの空き方を見る
現地で車が見えないことと未契約は別
昼間に車が少なく見えても、契約者が通勤や外出で使用しているだけかもしれません。
管理上の空きは、見た目の駐車台数ではなく、契約台帳を基に把握します。
まず総区画数、契約中の区画、募集中の区画、故障や工事で募集できない区画を分けましょう。
使用停止中の区画が混じったまま利用率を計算すると、募集を増やすべきなのか、設備の復旧を検討すべきなのかが判断しにくくなります。
「設備全体に対する契約率」と「実際に募集できる区画に対する契約率」を分けて見ると、理事会での説明もしやすくなります。
全体の契約率だけでは車高の偏りが隠れる
例えば、40区画のうち28区画が契約中なら、全体の契約率は70%です。
しかし、内訳が次のような状態なら、空きの性質は大きく変わります。
以下は考え方を示す仮定の例であり、実際の調査結果ではありません。
| 区画の区分 | 設置区画数 | 契約中 | 空き | 契約率 |
|---|---|---|---|---|
| 車高制限の緩い区画 | 10 | 10 | 0 | 100% |
| 車高制限の厳しい区画 | 30 | 18 | 12 | 60% |
| 合計 | 40 | 28 | 12 | 70% |
この場合、空いている12区画と、住民が希望する区画は一致していない可能性があります。
全体に空きがあるという理由で車高制限の緩い区画まで減らせば、かえって利用希望者を受け入れられなくなります。
区画の位置、車高・車幅・重量の制限、料金、空き始めた時期、問い合わせの有無を一覧にすると、埋まりにくい区画の共通点を把握しやすくなります。
全体の契約率は入口であり、対策は区画の条件ごとに考えることが大切です。
新しい契約と解約を別々に数える
同じ28区画の契約が続いていても、新規契約と解約がともにゼロの場合と、それぞれ五件ずつ発生している場合では、状況が異なります。
後者では新しい利用希望がある一方で、既存の利用者が離れる理由を調べる必要があります。
過去数年の契約開始日と終了日を確認し、解約が特定の区画に偏っていないか、車の買い替えや転居に伴うものかを整理しましょう。
解約理由を記録していない場合は、今後の解約受付から項目を設けます。
契約率の推移に加えて、その中で何が入れ替わっているかを見ると、募集を増やす対策と契約を続けてもらう対策を考えられます。

区画の条件別に見る契約状況の仮定例
第3章 住民が駐車場を使わなくなった理由を分けて考える
車を手放した世帯には料金以外の事情がある
運転機会が減った、家族構成が変わった、免許を返納したなど、車を持たなくなった理由はさまざまです。
自家用車の保有をやめた世帯にとっては、駐車場使用料が少し下がっただけで再び車を買うとは限りません。
また、週末にしか乗らない場合は、駐車場代だけでなく、自動車税、保険、車検、整備などを含めて保有を判断します。
管理組合が変更できるのは、その費用の一部です。
空きの原因が暮らし方の変化なら、値下げだけで満車を目指しても、見込みどおりに進まない可能性があります。
カーシェアは選択肢の一つとして確かめる
交通エコロジー・モビリティ財団の2026年3月調査では、全国のカーシェアリングの貸渡車両数は85,312両、拠点数は37,231か所とされています。
必要なときだけ車を利用するためのサービスが、一定の規模で存在していることが分かります。(出典:交通エコロジー・モビリティ財団)
ただし、全国の車両数から特定のマンションの空きの原因までは判断できません。
近隣にサービスがあっても、休日の予約状況や車種、利用料金が合うかどうかは世帯によって異なります。
アンケートでは、実際に利用しているか、車を手放した判断に関係したかを尋ねるとよいでしょう。
車を持っているのに敷地外で借りている世帯に注目する
すでに車を持ちながら外の駐車場を使っている世帯は、改善の方向を知る手掛かりになります。
敷地内に入る寸法の区画がないのか、料金差があるのか、使い方が分かりにくいのかで、必要な対応が変わるからです。
例えば、料金が同程度なら建物に近い区画へ移りたい世帯と、車高制限で利用できない世帯を一緒に数えるだけでは、具体的な利用見込みを把握しにくくなります。
移動したい気持ちに加えて、希望する区画、車両条件、契約可能な時期まで確認することで、利用見込みを具体化しやすくなります。
第4章 車両の制限と募集情報を照らし合わせる
入庫できるかどうかは車名だけで判断しない
機械式駐車場には、全長、全幅、全高、重量などの制限があります。
車種名が同じでも、年式やグレード、装着品などによって条件が異なることがあるため、利用希望者には自分の車両に関する情報を確認してもらう必要があります。
管理側も、カタログ上の寸法だけを見て独自に利用可能と判断せず、設備の仕様や取扱説明書に沿って確認します。
タイヤ外幅、最低地上高など、設備ごとに確認すべき条件がある場合もあります。
判断に迷うときは、製造者や保守事業者への照会が必要です。
空きを埋めるために、設備の制限を超える車両を受け入れることはできません。
「少し余裕がありそう」という現地の感覚で条件を緩めず、必要な確認を終えてから契約に進みましょう。
国土交通省は、機械式立体駐車場に関わる管理者や利用者などが取り組む安全対策を、ガイドラインや手引きで示しています。
募集や契約の際の説明にも、設備ごとの取扱説明書と併せて活用できます。(出典:国土交通省 機械式立体駐車場の安全対策)
募集案内に利用条件と問い合わせ先を明記する
募集掲示が「駐車場に空きがあります」だけでは、自分の車が入るか、月にいくらかかるか、いつから使えるかが分かりません。
区画ごとの車両制限、月額使用料、申込方法、確認窓口をまとめるだけでも、問い合わせの入口を整えられます。
実際に操作を見たいという希望には、管理上認められた方法で説明の機会を設けます。
見学者が自由に設備内へ入ったり、契約前に無断で試し入庫したりしないよう、案内方法を決めておくことも必要です。
問い合わせを受けたら、契約に至らなかった理由を記録します。
寸法が合わなかった、料金で見送った、利用時期が合わなかったといった記録があれば、募集情報の改善と設備側の課題を整理しやすくなります。
第5章 使用料を下げる前に契約数と収入を計算する
周辺相場は同じ条件の駐車場と比較する
使用料を検討するときは、近隣の料金を調べるだけでなく、比較する駐車場の条件をそろえます。
平面か機械式か、屋根の有無、車両制限、契約時の費用、自宅からの距離、利用できる時間などによって、借り手が感じる使いやすさは変わります。
周辺の募集価格は、現時点で成約している価格とは限りません。
条件の異なる高い駐車場を比較対象にして「敷地内は安い」と考えても、利用希望者の判断とはずれる可能性があります。
管理会社や地域の仲介事業者に、実際の問い合わせや成約の状況を確認する方法もあります。
一割の値下げで必要になる追加契約を確かめる
例えば、40区画のうち28区画を月額2万円で貸しているとします。
全契約が12か月継続すると、年間の使用料収入は672万円です。
これを既存契約も含めて一律に月額1万8,000円へ下げた場合、28区画のままでは年間604万8,000円となり、67万2,000円減ります。
値下げ後に従来の収入を上回るには、同じ条件で32区画の契約が必要です。
31区画では年間669万6,000円で、まだ従来の672万円に届きません。
32区画なら年間691万2,000円になります。
| 料金と契約数の仮定 | 年間使用料収入 | 現状との差 |
|---|---|---|
| 月額2万円で28区画 | 672万円 | 基準 |
| 月額1万8,000円で28区画 | 604万8,000円 | 67万2,000円減 |
| 月額1万8,000円で32区画 | 691万2,000円 | 19万2,000円増 |
この例は、すべての契約が一年を通して継続し、未収や追加費用がない場合の単純計算です。
実際には途中からの契約や解約もあります。
値下げは、どの世帯が何区画増えるかという見込みと組み合わせて判断する必要があります。

料金と契約数による年間使用料収入の仮定比較
区画ごとの料金差と既存契約の扱いも整理する
利用条件が異なる区画を一律料金にしている場合は、条件に応じた料金差を検討する余地があります。
ただし、安くしたい区画に需要がなければ、料金表を変えても空きは減りません。
希望者がいる区画といない区画を分けたうえで検討しましょう。
新規契約だけの割引を導入するときは、適用期間と終了後の料金、既存利用者への説明も必要です。
満車に近付いても、割引終了後に解約が続けば、継続的な改善につながらない可能性があります。
短期の申込数に加え、契約が続く条件かどうかまで考えることが大切です。
初期の割引や募集費がある場合は、その支出を含めて一年目と二年目以降を分けて試算します。
先ほどの仮定例では、32区画の契約を一年間維持できても、従来からの増収は年間19万2,000円です。
追加の募集費などがそれを上回れば、初年度の収支は改善しません。
料金改定の効果を判断する際は、契約数の増加と、増収分から追加費用を差し引いた金額を両方示しましょう。
第6章 アンケートで利用につながる条件を具体化する
利用しない理由は複数回答で集める
住民へのアンケートでは、現在車を持っているか、駐車場をどこで借りているか、今後の保有予定を尋ねます。
敷地内を利用しない理由は、料金、車両制限、操作、利用時間、申込方法などを複数回答で選べるようにすると、事情を整理しやすくなります。
「車を持つ予定がない」という回答を、駐車場そのものへの不満と取り違えないことも大切です。
現在の利用者にも、継続する予定や車の買い替え予定を聞いておくと、新しい契約を増やしている間に既存契約が減る可能性を検討できます。
希望と実際の申込見込みを分ける
「安くなれば使いたい」という回答だけでは、値下げ幅も契約時期も分かりません。
希望する月額の範囲、利用開始時期、車両の条件を併せて聞き、具体的な条件を示した後に申込意思を改めて確認する手順を設けます。
その際、アンケートへの回答が契約や区画確保を意味しないことを伝えます。
買い替え予定などの不確かな需要と、条件が整えばすぐに申し込める需要を区別すると、短期の改善と数年先の設備計画を分けて考えやすくなります。
集計結果を住民が検討できる形で共有する
個別の車両情報や生活事情を広く配布する必要はありません。
理事会では必要な範囲で情報を管理し、住民には理由ごとの件数や希望条件の傾向をまとめて共有します。
回答が少なかった場合は、その限界も示しましょう。
少数の声だけで全体の需要を決めると、後で反対意見が出たときに議論が戻りやすくなります。
アンケートの対象、回答数、実際の契約記録との関係を説明し、どこまで分かっていて何が未確認なのかをそろえることが、合意形成の下準備になります。
未回答を「利用する意思がない」と数えないことも必要です。
所有者が遠方に住み、賃借人の車の利用状況を把握していない場合も考えられます。
誰に回答を依頼するか、所有者と居住者で確認する内容をどう分けるかを、配布前に決めておくと調査の抜けを減らせます。
第7章 居住者向けの募集と利用ルールを見直す
空き情報が必要な人に届くようにする
掲示板の案内を出したままにしていても、すべての住民が見ているとは限りません。
管理組合で使っている配布物や連絡手段に合わせて、募集中の区画と申込窓口を定期的に知らせる方法を考えます。
住戸の売買や賃貸に関わる不動産会社へ案内するときも、空きの有無だけでなく車両制限や契約条件が伝わるようにします。
ただし、募集情報の配布だけで特定の入居予定者へ区画を確約しないよう、最新の空き確認と正式な契約手続きを分けておくことが必要です。
二台目の利用や区画変更は優先順位を決めて扱う
現在は一世帯一台までとしていても、空きが続く場合には二台目の利用を検討することがあります。
その場合、一台目を希望する世帯が現れたときの優先順位、契約期間、区画を返す条件をあらかじめ整理します。
同様に、車高制限の緩い区画を必要とする世帯と、別の区画でも支障がない世帯との区画変更が可能か、希望を確認する方法もあります。
ただし、既存利用者の契約や権利関係を無視して、一方的な移動を前提にはできません。
公平な手続きと本人の意向を踏まえて進めましょう。
賃貸で住む人の利用についても、管理規約や契約主体を確認する必要があります。
「居住者であれば同じ契約でよい」と決め付けず、区分所有者との関係を含め、管理会社や必要な専門家に整理してもらうことが大切です。
第8章 外部貸しは借り手の条件と日常の管理体制を合わせる
近隣の誰が継続して借りるのかを確かめる
居住者向けの改善だけでは空きが解消しない場合、近隣の住民や事業者などへの外部貸しが選択肢になります。
まずは、どの車種を何台、いつから、どの時間帯に使いたい人がいるのかを確認しましょう。
事業者から複数台の希望があっても、営業車の寸法が区画に合わなければ受け入れられません。
外部需要があるという話と、自分たちの設備で安全に利用してもらえる需要があるという話は分ける必要があります。
貸し方は月極、時間貸しなどで管理の負担が変わります。
機械式設備で不特定の利用者を受け入れる場合は、操作説明や入退場の管理が成立するかを特に慎重に検討します。
予約サービスを導入すれば、そのまま運用できるとは限りません。
外部の利用者にとっても、借りられる期間は重要な条件です。
住民の申込みがあれば明け渡す契約では、利用できる期間や通知から明渡しまでの猶予が、借り手の判断に影響します。
住民を優先する方針と、近隣の人が継続利用しやすい条件の両方を示したうえで、実際に応募が見込めるかを確かめましょう。
外部貸しを増やせば必ず満車になるという前提は置かないことです。
防犯と操作説明は実際の動線で確認する
駐車場へ行くために住宅のエントランスや居住者用通路を通る場合は、外部利用者にどこまで立ち入りを認めるのかを考える必要があります。
鍵やリモコンの貸与、返却、紛失時の対応も管理事項になります。
設備の操作説明を誰が行うか、異常時の連絡先はどこか、夜間に不具合が起きた場合に誰が対応するかを、契約前に決めます。
管理員が不在になる時間帯の対応を、日中と同じ前提で考えないことも大切です。
住民への説明では、外部に貸す区画と動線、利用時間、騒音への配慮、事故や損傷への対応を具体的に示します。
漠然と防犯面の賛否を聞くより、運用案を示して検討した方が、調整すべき箇所を把握しやすくなります。
第9章 外部貸しの契約と税務を募集前に確認する
管理規約と使用細則に沿って手続きを整える
外部貸しでは、誰に使用を認めるか、区分所有者の利用をどう優先するか、解約や明渡しをどのような条件にするかを整理します。
管理規約の変更が必要か、使用細則や契約書で定める内容かを確認し、必要な決議と説明を行います。
国土交通省が公表するマンション標準管理規約は、各マンションの規約を作成・改正する際のひな型です。
公表された内容が、そのまま個々のマンションの規約に置き換わるわけではありません。
手元の規約と現在適用される法令を基に、必要な手続きを確認しましょう。(出典:国土交通省 マンション標準管理規約)
外部使用部分だけが課税対象になるとは限らない
国税庁の文書回答では、マンション駐車場の外部貸しについて、募集方法や区分所有者を優先する条件などの事実関係によって、収益事業に該当する範囲が異なるモデルケースが示されています。
住民向けの貸付けも含めて収益事業となる場合と、外部使用部分のみが該当する場合などがあり、一律には扱えません。(出典:国税庁 文書回答事例)
具体的な取引に同じ判断が適用されるかは、契約内容などによります。
募集案と契約案を作る段階で税理士等に確認し、法人税や消費税など、必要となる取扱いと手続きを整理しておきましょう。
管理組合に残る金額で採算を比較する
外部貸しによる使用料収入からは、募集や管理の手数料、保険の追加負担、税務申告などの事務費用が生じることがあります。
受取額だけを見込んで計画を立てず、契約条件を基に必要な支出を確認します。
利用者を増やすことで、操作説明、問い合わせ、鍵の管理などの仕事も増えます。
これらを管理委託の範囲に含められるか、追加費用がかかるかも確認が必要です。
収入の見込みと日常の管理負担を一緒に示すことで、外部貸しが継続可能かを判断しやすくなります。
第10章 空きが残る場合に台数の見直しを検討する
附置義務は撤去を決める前に相談する
募集や運用を改善しても、必要とされる台数が設備の収容台数を下回る場合には、機械式駐車場の一部撤去や台数削減、平面化などが検討の選択肢になります。
その前に確認したいのが、条例などに基づいて駐車施設の設置を求める附置義務です。
既存の分譲マンションでは、一定の条件を満たす場合に附置義務台数の緩和が認められることがあります。
ただし、対象となる建物や認定基準、手続きは所在地等によって異なるため、所管行政庁への事前確認が必要です。(出典:東京都 駐車施設の附置義務)
自治体独自の条例や、建築時の許認可・協議の内容も確認対象です。
工事の見積もりを取る前後で行政への相談を進め、必要な台数が分からないまま撤去案だけを先行させないようにしましょう。
減らす台数と残す区画の条件を一緒に考える
台数を減らすときは、現在の契約数だけでなく、確認できた申込見込み、車の買い替え予定、住戸の売買や賃貸に伴う入居者の変化も検討材料になります。
ただし、将来の希望をすべて確実な契約として見込むことも避ける必要があります。
残すべきなのは、単に一定数の区画ではありません。
車高や重量など、利用希望に対応する条件も重要です。
総台数は足りていても、必要とされる車両を収容できなければ、敷地外で駐車場を借りる状況は残ってしまいます。
一部撤去や台数削減が可能な範囲、残す設備への影響は機種によって異なります。
平面化した後の収容台数、地下ピットの処理、排水、車路、工事中の代替駐車場も含めて確認し、希望台数だけから工事内容を決めないことが大切です。
空いている区画をまとめて使わなくする場合も、契約を止めることと、設備を安全に休止することは別です。
機械が一体で動く設備では、ある区画を使わなくても、他の区画の入出庫のために関連する装置が動く場合があります。
電源を切る、操作を止めるなどの判断を管理組合だけで行わず、製造者や保守事業者に休止可能な単位と必要な措置を確認します。
点検費がどの程度変わるかも、実際の保守契約に基づいて見積もってもらいましょう。

空きの原因の確認から設備規模の検討までの手順
第11章 空き対策を管理組合の予算と長期計画につなげる
期待する満車収入をそのまま予算に置かない
空きが続いているのに、予算だけが高い契約率を前提にしていると、年度ごとに収入不足が発生します。
直近の実績を基にした収入と、改善策が進んだ場合の収入を分けて示し、どの程度の契約増を見込んでいるのかを明らかにします。
また、駐車場使用料が管理費会計や修繕積立金会計のどこへ入っているかを確認します。
駐車場の収支だけでなく、そこからの繰入れを前提としている建物全体の計画への影響まで確認することが必要です。
ここでは、月々の支出と将来の修繕への備えを分けます。
保守費などの当面の支出を賄えていても、将来必要な修繕資金まで確保できているとは限りません。
逆に、その年だけ大きな修理があった場合、単年度の赤字をそのまま今後毎年の赤字と見なすこともできません。
数年の実績と長期修繕計画を並べて、継続的な収入不足なのか、一時的な支出の集中なのかを確認することが必要です。
駐車場を使わない世帯にも会計のつながりを伝える
空きの対策は、駐車場の利用者だけで決められる話とは限りません。
使用料収入が建物全体の管理や修繕の財源として計画されていれば、その不足は駐車場を使わない区分所有者にも関係します。
一方、負担の方法は管理規約や会計の仕組みによって異なるため、赤字をそのまま全世帯で均等に負担すると決め付けることもできません。
住民への資料では、駐車場の収入がどこへ入り、どの支出に使われ、不足が続くと何の計画に影響するのかを示します。
その関係が分かれば、利用者の料金改定だけで対応する案と、設備の規模を変える案を、管理組合全体の課題として比較できます。
空きの改善を待つ間も必要な維持管理を続ける
契約が増える見通しを立てていても、実際の増収には時間がかかります。
その間に必要となる点検や部品交換を、将来の契約増だけで賄う計画にはできません。
現時点の資金で、何をいつ実施する必要があるかを確認します。
国土交通省は、機器等の交換が適切に実施されなかったことによる事故の発生を踏まえ、2021年に維持管理指針の点検項目等を見直しています。
利用者が減ったことを理由に、必要な交換や安全確保を先送りしないことが大切です。(出典:国土交通省 維持管理指針の見直し)
設備の維持・縮小・更新を比較するときは、同じ検討期間で、初期工事費、点検・修繕費、使用料収入、利用できない期間などをそろえます。
修繕費の単価だけで結論を出すのではなく、実際に使われる区画を維持するための費用として比較しましょう。
第12章 対策の期限と判断基準を決めて進める
最初の段階で契約実績と未契約の理由を整理する
まず、契約台帳、区画の仕様、現在の募集条件を集め、空きがどの区画にどれだけの期間続いているかを確認します。
そのうえで住民アンケートや問い合わせ記録から、募集方法の改善で対応できる課題と、設備の制約が関係する課題を分けます。
この段階で、管理会社が持つ情報、保守事業者に確認する仕様、理事会が住民へ聞く内容を整理しておくと、調査の重複を減らせます。
調査を始めたものの、担当者が変わるたびに最初から聞き直す状態を避けるため、結果を記録して引き継ぎましょう。
募集改善は問い合わせから契約まで追いかける
改善策には確認の期限を設けます。
例えば、案内を更新して数か月後に問い合わせ件数と申込数を確認し、半年程度で契約の増減と収入を見直す進め方が考えられます。
これは一例であり、入退去の時期や契約手続きに応じて期間を設定します。
問い合わせが増えても寸法で断っているなら、案内の届き方だけが問題ではありません。
契約は増えたものの割引によって収入が減っているなら、料金設定の検証が必要です。
「空きが何台減ったか」に加えて、増えなかった理由と収支の変化を残しましょう。
取り組みを始める時点で、比較する基準日と確認日を決めておくと、評価が曖昧になりません。
例えば、改定前の契約数・月額収入を保存し、確認日には新規契約、解約、募集費、継続している問い合わせを同じ様式に記入します。
費用のかかる改善策は予算の上限も決め、申込みが増えないまま追加支出だけが続かないよう、継続・修正・終了を検討する時点を設けましょう。
工事案と運用改善案を比較できる資料にする
設備台数の見直しが必要になった場合は、需要調査の結果、行政への確認事項、工事後に利用できる区画、工事費と将来の維持費を合わせて資料にします。
居住者向けの改善や外部貸しを続ける案とも、同じ条件で比較します。
駐車場を使う人にとっては生活の継続が重要であり、使わない人にとっては管理組合の負担が関心事になります。
誰か一方の利便性や目先の負担だけで話を進めず、必要な駐車機能をどの規模で維持するかを、共通の資料で検討することが大切です。
まとめ 空き区画の原因に合わせて対策の順序を決める
都市部の分譲マンションにおける機械式駐車場の空きは、車を持たない世帯の増加だけで説明できるとは限りません。
車両の制限、料金、募集情報、契約条件によって、利用したい人と空いている区画が結び付いていない場合があります。
最初に取り組みたいのは、区画ごとの契約状況と、利用しない理由の把握です。
その結果を基に、居住者への案内や料金を見直し、外部貸しの可能性と必要な管理体制を検証します。
それでも需要に合わない規模が残る場合は、附置義務や住民の利用を確認しながら、一部撤去・台数削減や平面化などを比較・検討します。
空き台数を減らすことと、マンションの収支を改善することは、同じとは限りません。
使われる区画の条件、管理組合に残る収入、維持管理の負担を合わせて考えることが、無理のない駐車場運営につながります。